ハワイの風を運ぶ歌声。心に響くハワイアンミュージック・アーティストの世界へ
アロハ!ハワイの風、感じていますか?
空港に降り立った瞬間、ふわりと肌を撫でる湿った空気と、甘い花の香り。そしてどこからか聴こえてくる、あの優しいウクレレの音色…。私がハワイという楽園に恋をしたのは、まさにあの瞬間でした。
「ハワイアンミュージック」と聞くと、のんびりとしたウクレレの伴奏を思い浮かべるかもしれませんね。もちろんそれも大きな魅力のひとつ。でも、その世界はあなたが想像するよりも、ずっと深く、色鮮やかで、魂を揺さぶるほどの力強さに満ちているんです。
この記事では、ハワイを愛し、その音楽と共に暮らす私が、心からおすすめしたいハワイアンミュージック アーティストたちをご紹介します。伝統の心を大切にしながら、新しい時代の風を吹き込む彼らの音楽は、あなたの日常をきっと特別なものに変えてくれるはず。さあ、一緒に音楽の旅に出かけましょう!
ハワイの心を歌う伝説のアーティストたち
ハワイアンミュージックの歴史は、きら星のようなアーティストたちによって紡がれてきました。彼らの歌声は、単なるメロディーではなく、ハワイの歴史そのものであり、人々の魂の叫びでもあります。

イズラエル・カマカヴィヴォオレ (Israel Kamakawiwoʻole) - "Bruddah Iz"
ハワイアンミュージックを語る上で、彼の存在を避けて通ることはできません。親しみを込めて「Bruddah Iz(ブラザー・イズ)」と呼ばれる、イズラエル・カマカヴィヴォオレ。
340kgを超える巨体から紡ぎ出される、天使のように優しく、透き通った歌声。そのギャップに、誰もが心を奪われます。彼の代表曲「Somewhere Over the Rainbow/What a Wonderful World」は、あまりにも有名ですよね。この曲が世界中の人々の心を打つのは、彼の歌声に、ハワイの雄大な自然、そして人々の幸せを願う純粋なアロハ・スピリットが宿っているからに違いありません。
彼はハワイ先住民の権利回復を訴える活動家でもありました。その音楽には、楽園のイメージの裏にあるハワイの歴史や、故郷への深い愛情、そして未来への切なる願いが込められています。彼の音楽に触れることは、ハワイの魂の深淵に触れることでもあるのです。
ケアリイ・レイシェル (Kealiʻi Reichel)
もしあなたが「癒やしのハワイアンミュージック」を探しているなら、最初に出会うべきアーティストは間違いなくケアリイ・レイシェルです。彼の歌声は、まるで生まれ故郷マウイ島に吹く、心地よい風そのもの。
伝統的なチャント(詠唱)をベースにした荘厳な曲から、現代的なアレンジが光るポップな曲まで、彼の音楽は驚くほど多彩です。私が特に好きなのは、彼の代表曲「Ka Nohona Pili Kai」。カウアイ島のビーチで夕日を眺めながらこの曲を聴いた時の、世界と一体になるような感覚は、今でも忘れられません。

彼は優れたクム・フラ(フラの師範)でもあり、彼の音楽とフラは常に一体です。彼の曲で踊られるフラは、一つひとつの動きに物語があり、観る者の心を深く揺さぶります。メリーモナーク・フェスティバルで彼の生演奏に合わせて踊るダンサーたちを見た時、その神聖な美しさに鳥肌が立ったほどです。彼の音楽は、ハワイ文化の真髄を体験させてくれる最高のガイドなのです。
伝統を繋ぐレジェンドたち
もちろん、ハワイアンミュージックの礎を築いたレジェンドは他にもたくさんいます。「スラックキーギターの神様」と称されるギャビー・パヒヌイ (Gabby Pahinui)、その息子で美しいファルセット(裏声)が魅力のシリル・パヒヌイ (Cyril Pahinui)。彼らの奏でるギターの音色は、オールドハワイののどかな風景を心に映し出してくれます。
また、美しいハーモニーで人々を魅了した女性ボーカルグループのナレオ (Na Leo Pilimehana)も忘れてはいけません。彼女たちの代表曲「I Miss You, My Hawaiʻi」を聴けば、誰もがハワイへの想いを馳せるはずです。
現代に息づく新しい波 ~進化するハワイアン~
ハワイアンミュージックは、決して過去のものではありません。伝統をリスペクトしながら、新しい感性で音楽を創造する素晴らしいアーティストたちが、次々と登場しています。
ハワイアン・レゲエの旗手、コロヘ・カイ (Kolohe Kai)のポジティブなバイブスに満ちたサウンドは、聴くだけで笑顔になれますし、女性シンガーのアヌヘア (Anuhea)のポップでキュートな音楽は、ドライブのお供にぴったりです。

ノースショア育ちのジャック・ジョンソン (Jack Johnson)のように、サーフミュージックの文脈で語られるアーティストも、その根底にはハワイの自然を愛する心が流れています。
彼ら現代のハワイアンミュージック アーティストたちは、ジャンルの壁を軽々と飛び越え、ハワイの音楽シーンを常に面白く、刺激的なものにしてくれています。ぜひ、あなたの好きなジャンルから、新しいハワイの音を探してみてください。
もっと深く!ハワイアンミュージックの魅力を解き明かす3つの鍵
アーティストを知ると、今度はその音楽が持つ背景にも興味が湧いてきますよね。ハワイアンミュージックの魅力をさらに深く理解するための、3つの鍵をご紹介します。
1. 楽器:アロハの音色を奏でる主役たち
ハワイアンミュージックのサウンドを特徴づけるのが、独特の楽器たちです。ウクレレの軽やかで陽気な音色は誰もが知るところですが、もうひとつ欠かせないのが「スラックキーギター」。
これは、ギターの弦をあえて緩めて(スラックして)変則的なチューニングで弾く奏法で、なんとも言えない心地よい浮遊感と、複雑で美しい響きを生み出します。まるで一人で二人分のギターを弾いているように聴こえるんですよ。このスラックキーギターの音色こそ、ハワイの「ゆるやかな時間」を象徴しているのかもしれません。

2. 歌詞(メレ):言葉に込められた物語
ハワイの歌(メレ)の歌詞は、ただの言葉ではありません。その一つひとつに、神話の物語、王族への敬意、愛する人への想い、そして何よりもアロハ ʻĀina(アロハ・アイナ)=土地への愛が深く刻まれています。
歌詞の意味を知ると、音楽はさらに立体的に、色鮮やかに聴こえてきます。例えば、ある曲が「ワイキキの風」を歌っていると知れば、そのメロディーからダイヤモンドヘッドを撫でる貿易風を感じられるようになる。まるで、音楽が旅のガイドブックになるような感覚です。
3. フラ:魂で踊る、神聖な表現
そして、ハワイアンミュージックと決して切り離せないのがフラです。フラは単なるダンスではなく、音楽に乗せて物語を語る、神聖な身体表現。
ハンドモーション(手の動き)の一つひとつが、雨や花、愛といった意味を持ち、音楽の世界を視覚的に表現します。ミュージシャンとダンサーが呼吸を合わせ、一体となった時に生まれる「マナ(霊的な力)」は、観る者の魂を揺さぶります。ぜひ一度、生の演奏とフラが融合するステージを体験してみてください。きっと、言葉にならない感動に包まれるはずです。
いますぐできる!ハワイアンミュージックの楽しみ方
「なんだか聴いてみたくなった!」そんなあなたのために、今日からできるハワイアンミュージックの楽しみ方をご紹介します。

まずは、SpotifyやApple Musicといった音楽ストリーミングサービスが一番手軽です。「Hawaiian Music」や「Aloha Friday」といったキーワードでプレイリストを検索してみましょう。思いがけない素敵なアーティストとの出会いが待っていますよ。
お気に入りのアーティストが見つかったら、次はぜひライブへ。日本でも、ハワイアンレストランや夏フェスなどで、来日公演が頻繁に行われています。生の歌声と演奏の迫力は、音源とは比べ物になりません。アーティストの公式サイトやSNSをチェックして、イベント情報を見逃さないようにしてくださいね。
そして、一番のおすすめは、あなたの日常にハワイアンミュージックを取り入れること。朝の目覚めに、ドライブのお供に、リラックスしたい夜のBGMに…。お気に入りの一曲が、いつもの風景を少しだけ特別なものに変えてくれるはずです。
まとめ:あなただけの「アロハ」を見つける旅へ
ここまで、ハワイアンミュージックの世界を一緒に旅してきましたが、いかがでしたか?
伝説の巨人から、現代の若き才能まで。たくさんのハワイアンミュージック アーティストたちが、それぞれの形でハワイの心を歌い、私たちに届けてくれています。

私が初めてホノルルのレコード店で、迷いに迷ってケアリイ・レイシェルのCDを手にしたあの日。再生ボタンを押した瞬間、部屋の空気が一瞬でマウイ島の風に変わったような、あの感動は今でも宝物です。
ハワイアンミュージックは、ただ心地よいだけのBGMではありません。それは、ハワイの自然と文化、そして人々の温かい魂が詰まった、かけがえのないギフト。その音楽に耳を傾けることは、もうひとつのハワイを旅するようなもの。
さあ、次はあなたの番です。あなただけの心に響く一曲を見つける旅に、出かけてみませんか? きっとその歌声が、あなたの毎日に、優しく温かなアロハの光を灯してくれるはずです。