「ハワイ ロノ 閉店」:愛された店の灯りが消えた日、私たちが思うこと
ねぇ、聞きましたか? ワイキキで愛された、あのレストラン&バー「LONO(ロノ)」が、2023年に閉店したというニュース。ハワイ好きの友人からメッセージが届いた時、私は思わず「え、嘘でしょ?」と声に出してしまいました。それは単に好きなお店が一つなくなる、という以上の、心にぽっかりと穴が開くような、そんな寂しい知らせでした。
LONOは、ただ食事をする場所ではありませんでした。豊穣と平和の神「ロノ」の名を冠したその空間は、まるで現代に息づく聖域(ヘイアウ)のよう。足を踏み入れた瞬間に感じる、洗練されていながらも温かい空気。ハワイの神話や文化への深いリスペクトが、インテリアの隅々から、独創的な一皿一皿から、そしてスタッフの心からの笑顔から伝わってきました。
この記事は、単なる閉店のニュースをなぞるものではありません。「ハワイ ロノ 閉店」という出来事を通して、私たちが愛したあのお店の記憶をたどり、その背景に何があったのかを一緒に考え、そして、この経験から私たちが未来のハワイとどう向き合っていくべきかを見つめる、そんな旅のような時間にしたいと思っています。ハワイの優しい風を感じながら、少しだけ、私の話に付き合ってください。
静かに消えた灯り:一体、何が起きたのか?
「LONOが閉まったらしい」。その噂がSNSを駆け巡ったのは、2023年の夏のことでした。公式なアナウンスがあったわけではなく、まるで霧が晴れるように、静かにその場所から姿を消していたのです。だからこそ、多くのファンは戸惑い、そして悲しみました。
私が初めてLONOの扉を開けたのは、オープンして間もない頃。ワイキキの喧騒から少しだけ離れた場所に、まるで隠れ家のように佇んでいました。店内は薄暗く、ティキの彫刻やトロピカルな植物が効果的に配置され、一瞬で都会の真ん中にいることを忘れさせてくれる、魔法のような空間でした。

そこのポケは、ただのポケじゃなかった。新鮮なアヒ(マグロ)に、思いもよらないハーブやスパイスが組み合わされ、一口食べるたびに新しいハワイの味覚を発見させてくれる、まさに芸術品。友人の間では「LONOの閉店は、ワイキキの食文化における一つの時代の終わりだね」なんて声も聞かれたほどです。
現地に住む知人に連絡してみると、やはりコロナ禍以降の経営の厳しさが大きな要因だったのではないか、とのことでした。ハワイの観光業が息を吹き返し始めた矢先の出来事だっただけに、余計にその事実が重くのしかかります。大好きだったお店が、さよならも言えずにいなくなってしまうことの寂しさを、これほど痛感したことはありませんでした。
なぜ?愛された店の閉店、その背景を考える
「どうして、あんなに素敵なお店が…?」誰もがそう思ったはずです。閉店の背景には、きっと一つの理由だけではない、いくつかの要因が複雑に絡み合っていたのでしょう。
まず考えられるのは、やはりパンデミックが残した深い爪痕です。観光客が激減した時期を乗り越えるのは、どんなビジネスにとっても至難の業でした。特にLONOのように、質の高い食材とサービスで「特別な体験」を提供していたお店は、コストもかさみます。ワイキキ周辺の容赦なく高騰し続ける家賃も、大きなプレッシャーだったに違いありません。
私が訪れた時、満席でなかなか予約が取れないこともありましたが、それは同時に、最高のクオリティを保つために席数を絞り、熟練したスタッフを確保する必要があったからかもしれません。人件費の上昇も、経営を圧迫した一因でしょう。

そして、もう一つ。時代の流れ、という側面もあったのかもしれません。最近のワイキキでは、よりカジュアルで、SNS映えするようなお店が次々とオープンしています。LONOの持つ、しっとりとした大人な雰囲気は唯一無二の魅力でしたが、もしかしたら、その「敷居の高さ」が、新しい客層を呼び込む上での課題になっていた可能性も否定できません。
閉店は本当に残念ですが、その裏側にある厳しい現実を知ることも大切です。LONOの閉店は、ハワイの個人経営の店が直面している課題を、私たちに突きつける出来事でもあったのです。
文化の発信基地を失うということ
LONOの閉店がこれほど寂しいのは、そこが単なる美味しいレストランではなかったからです。私にとって、LONOは「ハワイの文化とアロハスピリットを体感できる場所」でした。
壁に飾られたヴィンテージのサーフボードや、ローカルアーティストによる絵画。店内に心地よく流れるハワイアンミュージック。そこで働く人々は、料理を運ぶだけでなく、ハワイの物語を語ってくれるストーリーテラーのようでした。
彼らが教えてくれた、カクテルに使われているリリコイ(パッションフルーツ)の話。店名の由来であるロノ神の神話。そうした一つひとつの会話が、私のハワイへの愛をより深いものにしてくれました。観光客だけでなく、地元の人々にも愛され、コミュニティの一部となっていたからこそ、その喪失感は計り知れません。

あの場所で働いていた人たちは、今どこでその才能とアロハを分かち合っているのでしょうか。LONOに作品を展示していたアーティストは、新たな発表の場を見つけられたでしょうか。そして、あの跡地はどうなるのでしょう。新しいビルが建つのか、それとも別のお店が?
もちろん、ハワイには他にも文化を体験できる素晴らしい場所がたくさんあります。でも、LONOが担っていた「食を通して現代のハワイアンカルチャーを発信する」という役割は、とても貴重なものでした。この閉店は、私たちに文化を未来へ繋ぐことの難しさと、その尊さを改めて教えてくれたように思います。
ロノ神の物語と、一つの時代の終わり
なぜ、あのお店の閉店がこれほどまでに私たちの心を揺さぶるのか。その答えのヒントは、お店の名前にもなったハワイの神様、「ロノ神」の物語にあるのかもしれません。
ロノ神は、ハワイの四大神の一柱。雨と、大地の実り、豊穣、そして平和や音楽を司る、とても穏やかで人々に愛された神様です。古代ハワイでは、ロノ神を讃える「マカヒキ」という収穫祭の期間、全ての争いごとが禁じられ、人々はスポーツやフラ、宴を楽しんだと言います。
まさにLONOというお店は、このロノ神の精神を現代に体現したような場所でした。美味しい料理(豊穣)を、美しい音楽が流れる空間(音楽)で、大切な人たちと平和に分かち合う(平和)。だから私たちは、無意識のうちにあの場所に惹きつけられていたのかもしれません。

ハワイ神話の中で、ロノ神は愛する妻を失った悲しみから、カヌーに乗ってハワイの地を去り、遠い国(タヒチ)へと旅立ってしまいます。しかし、「いつか必ず戻ってくる」という約束を残して。LONOの静かな閉店は、まるでロノ神が再び旅立ってしまったかのような、神話的な寂しさを感じさせます。
「LONOロス」のあなたへ。次のハワイ旅で訪れたい場所
「LONOがなくなった今、次のハワイ旅行でどこへ行けばいいの…?」そんな「LONOロス」に陥っている仲間たちのために、私が本気で考えた代替案をいくつかシェアさせてください。もちろん、LONOの代わりはどこにもありません。でも、あの店のスピリットのかけらを感じられる、素敵な場所はまだハワイにたくさんあるんです。
LONOのあの大人な雰囲気と極上のカクテルが好きだったあなたには…
- Bar Leather Apron(バー・レザー・エプロン):ホノルルのダウンタウンにある、まさに隠れ家中の隠れ家。世界レベルのバーテンダーが作るカクテルは、一杯一杯が物語。予約必須ですが、その価値は十分にあります。
LONOのクリエイティブなハワイ料理に感動したあなたには…
- MW Restaurant(MW レストラン):ハワイのトップシェフが腕を振るう、モダンハワイアンキュイジーヌの名店。地元の食材を使いながらも、洗練された驚きのある料理が楽しめます。
- Piggy Smalls(ピギー・スモールズ):カカアコ地区にある人気店。ベトナム料理をベースに、ハワイの多文化をミックスした独創的な料理が絶品です。
LONOの海を感じる開放的な雰囲気が恋しいあなたには…

- Hau Tree(ハウツリー):カイマナビーチの目の前、樹齢100年を超えるハウの木陰で食事を楽しめる最高のロケーション。ブランチが特に有名で、心地よい風に吹かれながら過ごす時間は格別です。
新しいお気に入りのお店を見つけることは、ハワイ旅行の新たな楽しみにもなります。勇気を出して、新しい扉を開けてみてください。きっと素敵な出会いが待っていますよ。
まとめ:さよならは寂しいけれど、終わりじゃない
「ハワイ ロノ 閉店」。この出来事は、私たちに寂しさとともに、多くのことを考えさせてくれました。愛する場所が永遠ではないという現実。そして、私たちが大切に思う文化や場所を、どうすれば守り、応援していけるのかという問いです。
LONOの灯りは消えてしまったかもしれません。でも、あの場所で感じた温かい気持ち、美味しい料理に驚いた感動、友人たちと笑い合った楽しい記憶は、決して消えることはありません。
そして、私たち一人ひとりがハワイの文化を愛し、リスペクトし、ローカルビジネスを応援し続けることが、第二、第三のLONOのような素晴らしい場所が生まれる土壌を育むのだと信じています。次にハワイを訪れる時は、少しだけ意識して、ローカルの小さなお店に足を運んでみませんか?
この記事を読んでくださったあなたが、LONOの物語に少しでも共感し、ハワイへの想いをより一層深めてくれたなら、こんなに嬉しいことはありません。

ありがとう、LONO。あなたがワイキキに灯してくれた光は、ハワイを愛する私たちの心の中で、これからもずっと、温かく輝き続けることでしょう。Mahalo Nui Loa.